昔のはなし

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「光定ちゃんモテモテね」 「だって光道様の息子さんだもんねー。光道様も若い頃はそれはそれは凛々しい顔立ちでモテモテだったわよ」 「あら、光道様は今も素敵よ?」 「あら、そうよねー。ね、かなちゃんもそう思うでしょ?」 「そうですね」 何度か経験を積み、緊張がほぐれてきた彼の説法は、どんどん聴きやすいものになっていった。それに伴い、お寺に来る人も増えていった。 仏教を学ぶことよりも、彼に会いに来ることが目的に見える女性達にも、彼は他の信徒さん達と変わらず接していた。 ますますお坊さんらしくなる彼をみて、私は更に彼に関心を持ち始めた。しかし、彼に会いに来る女性達をみながら、やはり彼にはああいう綺麗な女性達に囲まれるのが似合っているなぁと思うと、もやもやした感情を抱くようになった。今までは私の癒しの場だったそこは、私の余計な感情のせいで、それだけの場所ではなくなってしまった。そのせいで、少しずつお寺に通う頻度も減っていった。
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