第1章

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「もう遅いし、寝たら?私も風呂入って明日の準備したら寝る」 「うん。あ、そういえば布団1つしかないけど」 「あー、もう一つ仕舞ってあるからいいよ、それで寝て」 「布団出すの面倒なら、俺ソファで寝てもいいし、あれだったら布団一緒でもいいよ?」 「気にしないで、おやすみ」 「あーうん、分かった。おやすみ」 そう言うと、旦那は私の布団に横になった。一緒に寝ようとか簡単にいうけど、勘弁して欲しい。私は旦那が好きなんだ。一緒に寝たら、もっと旦那と近くにいたいと思ってしまう。色欲もやはり煩悩の一つで、禁止はされていないが、快感を求める行為もあまり良しとはされていない。私は旦那を困らせたくない。旦那の負担になりたくない。だから私はこの旦那と距離を取る生活に満足しているつもりでいた。でも、旦那が帰った後に、少しその布団を借りて温もりを感じるくらいは許して欲しい。しかし、なぜ突然旦那はうちを訪ねてきたのだろう。別居しようと提案した時に、何かあった時に部屋に入れるように合鍵が欲しいと旦那が言ってきたから、私はそれを渡した。旦那はそれから私の部屋に来たのは3回目。今までの二回は用事があってきていたのだが、今日はなんで来たんだろう。 「あのさ、奏」 「ん?」 私は旦那の布団とソファーを挟んだ反対側に布団を敷き、横になっていた。 「俺、明日から1ヶ月修練に励んでくる」 「...ん、体に気をつけてね」 「うん、ありがとう」 そうか、そういうことか。それを伝えに旦那はうちに来てくれたのか。別に電話でもいいし、メールでもいいのに。わざわざ会いにきてくれるなんて、やっぱりうちの旦那は仏様並みに優しい。そんなことを思いながら、一ヶ月旦那に会えないことを考え、少しだけ私は涙をながした。なおさら、今日もっと早く帰ってくれば良かったと思った。
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