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「あれ、お見合いって二人だけで話す時間とかないの?」
「え、だって四人で話した方が楽しいだろ?あれ、かなちゃんと二人きりで話したかったかい?」
「...そう、言うわけじゃないけど」
「お前とかなちゃんは話そうと思えばいつでも話せるんだから。それに今日は見合いといっても、かなちゃんのお母さんが私とお前に会いたいって事で開いた会だったからねぇ。親にとって子供はいくつになっても子供だからねぇ。自分の代わりに将来子供のそばに居てくれる人がどんな人か、親は気になるんだよ」
「そういう物なのか」
「それは私にも言えるけどね。ちなみに、かなちゃんのお母さんから、お前は合格をもらったよ」
「そうなんだ」
「ああ、あとはお前の気持ちだけだよ。父さん的にも、かなちゃんはもちろん合格だからね」
もともと俺は相手が誰であれ、この見合いの話を受けるつもりでいた。その気持ちに変わりはないのだけれど、けど...。
「山田さんの気持ちは?」
「かなちゃんがお前と結婚してもいいって言ってくれたから、今回お前に声をかけたんだよ」
「そう、なんだ」
それは意外だった。あの山田さんが俺と結婚してもいいと思ってくれてるなんて。
山田さんのことを、俺はあまり知らない。きっとそれは山田さんも同じ。なぜ、山田さんが俺を選んでくれたのか分からない。もしかしたら、山田さんは父さんをすごく尊敬しているから、父さんに頼まれて、仕方なく承諾してくれたのかもしれない。
じゃあ、俺はどうだろう。俺の気持ちは...。
いつも頑張っている山田さん。山田さんと特に話しをする訳ではないけれど、頑張っている山田さんを見ると、俺も頑張ろうという気持ちになれた。それに、少しずつ元気になっていく山田さんをみるのが、俺は嬉しかった。だから、正直俺は、山田さんが最近うちに来なくなって寂しかった。
きっと、この見合いの話がなかったら、そのまま山田さんはうちに来なくなっていたかもしれない。
俺は、見合いの話をもらった時にあった胸の奥のつっかえが、いつのまにかなくなっていることに気づいた。
俺はこれからも、山田さんに会いたい。一度山田さんと一緒にいる未来を想像してしまったら、それ以外の未来を想像したくなくなった。
「お願い、します」
「わかった。かなちゃんとお母さんに伝えておくよ」
俺は、なぜか赤くなる顔を隠しながら、父さんにそう答えた。
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