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「光定さん。どうしたの」
「ん、ごめん」
昨日光定さんがうちに泊まりにきた。そして二人で同じ布団に横になり、寝ていたのだが、なんか身体が暑いなと思って目が覚めたら、背中から光定さんが私を抱きしめていることに気づいた。別に嫌では無いのだが、暑い。出来れば離れてほしいと思ったが、光定さんがあまりに強く抱きしめているので、私はそのままに抱きしめられることにした。
「なんか、昔の夢見てた」
「うん」
「俺、奏に片思いしてると思ってた時、いつ奏が俺から離れていくんだろうって、ずっと不安だった」
「うん」
「でも、目が覚めたら奏が目の前にいて」
「うん」
「思わず、こうしてました。ごめん」
暫く抱きしめられていると、光定さんが少しずつ話し始めた。最後の方は、どんどん小声になって聞こえずらなかったが、なんとか聞き取れた。それにしても、この人、なんて可愛い事を言うんだ。
私は、私の目の前で組まれている光定さんの腕を少し緩め、腕の中で光定さんと向き合うように体の向きを変えた。そして、腕を光定さんの首に回し、私もぎゅっと光定さんを抱きしめた。
「奏は、ここにいますよ」
「うん」
「光定さんも、ここにいるよ」
「うん」
そういうと、光定さんは私の首筋に鼻を擦り寄せてきた。くすぐったかったけど、振り払うのは可哀想だから、なんとか耐えた。
「奏」
「うん」
「あの、触っても、いいですか」
「どうぞ」
光定さんは、私に触る前に、必ず同意をとる。別に光定さんに触られるのは嫌ではないので、いちいち言わなくてもいいのだが、そんな光定さんが可愛いので、私はそれを言わないでいる。
光定さんは私を抱きしめていた腕を少し緩め、部屋着の下に手を入れる。ゆっくりと私の肌に触れる手の感触がくすぐったくて、私は笑いをこらえるために、思わず光定さんさらに抱きついてしまう。
「くすぐったい?」
「うん、少し」
「ごめんね」
「いいよ」
そう言いながらも、光定さんは手を止めず、ゆっくり私の肌を撫でる。もう声を我慢しきれなくて、軽い笑い声が漏れてしまうし、じっとしていられなくて、身体が跳ねる。すると、耳元で光定さんがため息をつきながら、私をまたぎゅっと抱きしめてきた。
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