好きだから

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好きだから

今日も奏の家に泊まりに来た。最近、俺には悩みがある。 奏は最近、触るのを許してくれるようになった。それがいけなかった。最近では、奏と一緒にいるとすぐ近づきたくなるし、触りたくなる。恋人だし、普通の事だと思うのだが、奏は俺が触ると顔を真っ赤にして泣いてしまう。いや、俺にとってはそんな奏も凄く可愛いから良いのだが、いや、可愛すぎるのも欲が抑えきれなくなりそうで駄目なのだが。つまりなにが言いたいかというと、奏はまだ俺に触られるのに慣れていないという事だ。奏はああみえて繊細な所があるから、俺のために慣れないことに我慢してくれているのだろうけど、あまり慣れない事を頻繁にしているといっぱいいっぱいになって、俺から離れてしまうのではないかと思う。それは困る。昔と違い、奏が側にいるのが当たり前になってしまった。今更奏がまた離れていったら、俺は耐えられるだろうか。また父さんに心配をかけてしまうかもしれない。 だから、俺はなるべく奏に触れないように我慢していた。お風呂上がりのいい匂いがしても我慢。奏の白い足が見えても我慢。俺の話を聞いて一生懸命聞いてくれて、時々笑顔を見せてくれても我慢。 「光定さん?」 「ん、なに?」 己の煩悩と闘いながら、少し奏から離れた所に座っていると、奏が俺の名前を呼んできた。ふと振り向くと、奏が両手を広げながら 「おいで?」 と、いってきた。 「え」 俺は驚きのあまりそのまま固まった。なぜ奏がそんなことを言ってくるのか。もしかして我慢していたつもりだったが、無意識に煩悩に負けて何か言ってしまったのか。奏のその言動を嬉しく思いながらも、俺の邪な気持ちが奏にバレてしまったのではないかと思い、俺はその場を動けずにいた。
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