好きだから

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「あれ、間違えた?」 「え?」 「光定さん、これしたいのかなって思ったんだけど...」 黙っている俺を不審に思って、奏が両手を広げたまま、少し首を傾げて不安そうにそう言ってきた。 「間違ってないです」 「良かった」 たまらず俺は奏の所に行き、奏を抱きしめた。すると、奏は嬉しそうにそう言った。 奏を俺の膝の上に乗せ抱きしめる。俺は求めていた奏の温もりと柔らかさと匂いとをしばらく堪能した後、気になっていた事を奏に聞いてみた。 「なんで、俺がこうしたいって分かったの?」 「え、何でだろう。そんな顔してた気がした」 「...俺って、そんな分かりやすい?」 「んー。昔は光定さんの顔見ても何も分かんなかったけど、最近は、ちょっとだけ、分かる、かも...」 最後の方は、少し恥ずかしかったのか、俺の首元に顔をさらに隠しながら小さい声でそう言ってくる奏。 あー、もう、本当。たまらない。俺はどうにかなりそうな心臓ごと、奏を強く抱きしめた。 「ねー、奏?」 「ん?」 「奏は、俺に触られるの、いや?」 「え?」 ついでにと、今まで気にしていた事を、奏にきいてみた。 「奏、俺が触ると、顔真っ赤にして泣いてるから、俺のために我慢してくれてるのかなって」 俺はもっと奏に触りたい。けど、奏にはあまり我慢をさせたくない。奏の口から嫌だって言葉を聞ければ、それを思い出して、これからも我慢できる気がした。ずっと我慢できるかは、あまり自信は無いけれど。 と、なかなか返ってこない奏の返事を待っていると、奏が俺の首に腕を回して、俺の顔をさらにぎゅっと引き寄せた。 「バカなの」 「え?」 すると、予想していなかった言葉が、奏から返ってきた。 「大好きな人に、触ってもらえるのが嫌な人なんて、いないから」 俺の耳元でそう恥ずかしそうに囁く奏の声は、今の俺にとって毒でしかなかった。俺はたまらずさらに強く奏を抱きしめる。 「奏の方がバカだよ。俺、ずっと我慢してたのに。大好きな人にそんな事言われて、我慢できるやつなんていないから」 俺がそういうと、奏はバカと言われたのが気に障ったのか、少しむくれながら 「...我慢しなきゃいいじゃん」 と、言ってきた。
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