好きだから

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「奏、行ってくるね」 そういうと、奏は寝ぼけながら小さくうなづいてくれた。 あの日から、奏は俺の目を見てくれない。そして、話しもしてくれなくなった。けど、こうやって、何かしらの反応はからなず返してくれる。どうやら、奏は恥ずかしいみたいだ。本当は、俺の事を無視したいくらい恥ずかしいんだと思うが、それをしたら俺が悲しむ事をわかっていて、反応だけは返してくれている。 「今日は父さんが赤飯作ってくれるって。来る?」 俺がそう聞くと、奏は何も言わずにすぐにうなづいてくれた。 少し寂しいが、しょうがない。それくらいの事をしたのだから。でも、この奏も、俺にしか見せてくれない奏で、可愛い事には違いないので、俺は意外と幸せだったりする。というか父さんがこのタイミングで赤飯を作ってくれるっていうのが、意味深で何もかも知られているような気がして、少し居心地が悪くなる。あの人、奏の部屋に隠しカメラとか置いてないよな...。 そんな事を思いながら、俺は奏の部屋のドアを開けて部屋を出...ようとした。 「行ってらっしゃい、光定さん」 そして、ドアが閉まる直前、久しぶりに奏の声を聞いた。 久しぶりに聞く奏の声はやっぱり可愛くて。そして、俺はそれだけで胸がいっぱいになった。
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