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それぞれの想い
「おはようございます」
「あ、おはようございます!光定様!」
私は最近、近くのお寺の朝のお勤めに来るのが日課になっている。まだ若い私が、何故そんな地味な事を日課にしているというと、この、イケメンなお坊さんとして最近テレビにも出た、光定様に会いに来るため!特に月曜日で、これから一週間仕事を頑張らなきゃ行けないという憂鬱な朝に、光定様にこうやって笑顔で挨拶をしてもらえると、不思議とその憂鬱な気分を忘れる事が出来る。光定様はこんなに格好良いのに、女性の影が見えない所も、お坊さんらしくて素敵だと思う。あばよくば私が光定様の大切な人になれたら...なんて事を考えて幸せな気分に浸るのが、最近の私のささやかな幸せ。
「あの、光定様。よかったら、今度ご飯でも一緒に
「ぱぱあ!」
「ん?お、あかりじゃないか」
すると、遠くから子供の声が聞こえたと思ったら、光定様が私へ向けてくれていたお顔を、その声のする方へと向けた。そして、その子供のものらしき名前を光定様は呼んだ。え、今の、私の聞き間違いでなければ...。
「ぱぱあ!」
「おはよう、あかり。今日は早く起きられたんだね、偉いね」
「うん!あかりえらいよ!」
すると、その子供はまた光定様をぱぱと呼び、光定様に抱きついた。光定様は私が今までで見た笑顔の中でも、一番無邪気に嬉しそうに笑っていた。というか、ぱぱってこの子が言ったって事は、光定様はやっぱりもう結婚しているのかしら...。
「あかり、一人で来たの?」
「ままときた!」
そう言うと、子供が先程来た方を指差したので、私も光定様と一緒にその方向を向いた。
「あかり、走るのはやいよ」
「あかりはやーい!」
「ふふ、お疲れママ」
「もう、笑い事じゃない」
すると、その方向から、一人の女性がこちらに向かってきた。
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