それぞれの想い

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「どうしたの?吉野さん、知り合いだった?」 寂しそうな顔をしながらも笑顔で歩いていった女性の後ろ姿を、私は無意識に目で追っていた。 「ううん、若くて可愛い子だなぁって思って」 「そうだよね。最近は特に若い人もうちに来てくれるようになったよね。これもテレビの影響かな」 そう、光定さんが先日テレビに出た事で、最近尚更うちに来る人達が増えた。嬉しい事だ。でもその中には、先程の女性のように、光定さんに憧れている人も多くいる。夫は、そういう人なのだ。沢山の人を幸せに出来る存在。きっと、彼女の目にも、何故私がこの人の隣にいるのか疑問に思っただろう。 私がどうにもまとまらない心と向き合っていると、何かに肩を叩かれた。私は驚き、急いで叩かれた方を振り向くと、そこには笑顔の光定さんがいた。 「な、なに?」 私がそういうと、光定さんは笑顔のまま、私にさらに顔を近づけてきて...。 「好きだよ」 そして、私の耳元で、私にしか聞こえない声でそんなことを言った。 「...は?こんなとこで、何言って」 「んー、なんか。そう言って欲しそうな顔してた気がして...。間違ってた?」 光定さんはそう言いながら、少し恥ずかしそうに笑った。きっと、私のもやもやした心が顔に出たいたのだろう。それに気づいて、照れながらも私の事を安心させようとしてくれた光定さんの優しが嬉しくて、そして、私の分かりやすさが恥ずかしくて、顔に熱が集まるのを止められなかった。 「まま、おかお、まっかっかー!」 「ふふ、ほんとだねー」 「うるさい。あかり、そろそろパパから離れて。パパお仕事だから」 「えー!やー!」 「あかり、パパが上手にお仕事出来るように、応援してくれる?」 「...んー、あい。分かった!頑張ってねぱぱあ!」 「うん、頑張るよ」 どうにか平常心を繕いながら、光定さんからあかりを離そうとする私だったが、あかりはなかなかいう事を聞いてくれない。しかし、光定さんがそういうと、あかりはしぶしぶ私の方に戻ってきてくれた。さすが光定さん、あかりの扱いが上手い。
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