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寒くて寒くて仕方無かった。
物心ついた時から体をガタガタ震えさせて、縮こまって、誰もが俺を指さして笑った。
だが、俺の頭の中には、ただ寒いということしか分からず、笑う理由も、その意図も分からなかった。
ただただ寒い。寒くて寒くて辛い。
服を何枚重ねても、どんなに防寒しようとも、体の震えは止まらない。
誰かが俺を抱きしめ泣いていたのを覚えている。愛とか何とかしない言ってた気がするが、もう思い出せない。何言ってたっけ?
とにかく寒い。周りがマグマに囲まれても、俺だけは平気だった。頭の中はただ寒いという言葉で埋め尽くされる。
逆に、極寒の中でも平気だった。周りは凍傷などで命を落としていたが、俺はただ寒いという言葉だけが頭の中を満たしていた。
1度だけ、水面に浮かんだ俺の姿を見た事がある。顔の右半分が醜く焼け爛れていた。
そして、何故か俺の手は大きな爪を持っている。俺を産んだ奴らはどんなやつだったのだろうか。それはもう分からない。
そんな時、変なやつに出会った。
ソイツはどっかの無名のカミサマだと言った。名前はうぉーりあと名乗っていた。
うぉーりあは俺が今まで気づかなかった頭の上に浮く石を見つけた。アイツ曰く、『ちょっと特殊な存在だから見つけられたのかもね』だそうだ。
うぉーりあはそれから、服とマフラーをくれた。頭の中の寒いが消えた。
アイツ曰く、俺の頭の中の寒いは『周りに誤認をさせる』力があるのだそうだ。それと、『防衛本能』。
俺が寒いを頭の中でいっぱいにすると、周りは『そんなことない。涼しい』と誤認し、火の中に平気で飛び込んだりしてしまうのだそうだ。さらに言えば、極寒にも灼熱にも耐えられるのは見えない防壁が俺の周りに貼り巡るからだそうで、いわゆる、寒いは副作用のようなものだ。と言っていた。制御出来れば、寒いで頭を埋め尽くさなくても良くなるそうだ。しかも、周りを凍らせたり、雪を発生させたりも出来るらしい。どっかで聞いたことのあるような、ないような話だと思った。俺が人工物だと言うのも、この時初めて知った。何の為に生まれたのかまでは、うぉーりあでも分からないらしい。
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