エピソード1

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「ただいまー」 シーンとしてる。 中に入ると、段ボールベッドに寝る三人。 なんか疲れた、一週間、長。 段ボールにもたれた。 さっきの飲み屋で言われた声が耳に残る、早川ビスの娘だ。もうそんな言われ方はしなくなる。 葬儀が終わってすぐに話をされたのは、さっきの技術部の部長、なんとか、他の会社に持っていかれないようにしてほしいと頭を下げすぐに工場に残っていた物を会社へ搬入、そして、父が作った設計図も破格で売れた、大事な物はこの会社が引き取ってくれた、この先にある未来だから、ありがとうといわれた。 この先かー、考えたくもない、かな…。両親の笑う写真、ボロッと涙がこぼれた。 何もなくなったとはいえ、会社の技術部に行けば父さんの文字が見ることができる、いつか、歩巳や郁にも見せたいな。 横に布団を敷いて寝た、体を丸くして、声を聞かれないように泣いた。封印したはずの涙は一度流れると歯止めがきかなくて・・・ なんで二人だけで逝っちゃったの?なんで相談しなかったの?私たちの名前で作った借金があったからかな。 悪いのは後を継がないといって出て行った私のせいなの? 明日は目覚ましが鳴らないから、神様今だけ泣くことを許してください。 大きな音を立てないようにタオルに顔を埋めて泣いた。
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