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高校を卒業して半年、まだ学生気分のきえない私は、この先どうしていいかわからなくなってしまった。
年の離れた兄弟は、小学校一年の歩巳(あゆみ)と保育園児三歳の郁弥(いくみ)。
親戚たちからは冷たい目で見られ、私は就職したんだからという事だけで、この二人を押し付けられた。当たり前の事なんだろうけど、その現実がまだなくて。
自殺した親、死ぬならこいつらも連れてけって親戚たちに言われたけど。
二人の遺体を見たとき、真っ白になった、本当に何でここに居るのさえ分からなくなった、ただ、親戚から浴びせられる言葉に悔しさが先行して唇をかんだ。
借金は三人が死ぬまで返せないほどあった。
真っ白な頭、でも手だけが動いていたのがわかる。
「こんな時までゲームか?」
ゲーム?そんなのしたことがない。
「もしもし」
向こう側から聞こえる声。
「何してる!」
「た、助けてください」
落ち着いてくださいの声に、父と母が自殺したことを話した。
「誰に何を言った!」
怒鳴る親戚に、弁護士と話した。
しんとした、なんで冷静でいられたか、あとになって思い出す。
相続放棄、破産手続き。次々と葬儀そっちのけで行われる手続きは親の死んだことさえ考えさせてくれる暇を与えてはくれなかった。
財産なんかなくてもこの先、何とかやれる、やって見せるってタンカ切ったけど、先立つものもいるんだよな。
次から次へと起こることは、今まで経験したことのない事の連続、それでも一週間の休みはあっという間で。いつの間にか、目の前に今まで普通にあった物達が無くなって行って、今まで生活していて不自由なかった物達が、目の前から消えていく。
なにも無くなった、この家、工場、そしてこの土でさえお金になるものはすべてお金に換えた。親戚も少しならと融通してくれたけど、香典が目の前で鷲頭かみ状態で持っていかれたときは悔しかった。
先祖の墓に骨が入れられるとき、親戚が足で押し込んだ。
悔しくて、悔しくて。
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