エピソード2

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「いっぱいいるな」 部長も誘った。 いろんな話を聞いて、消火器の使い方を教わった。親子参加のため、みんなお父さんお母さんと消火器を持つ、それも楽しそうだし太一君はもっと嬉しそうだ。 熱い炎に向ける消火器は、子供たちには恐怖に感じたのかもしれない。消防車に乗せてもらったり、消防士さんの格好をさせてもらったりした三人。 帰りは興奮して話す三人にこっちまでが疲れてしまった。 それでも部長には、クリスマス、忘れてませんよねと念を押しておいた。 うわーなんて焦ってたけど、まだ三日あるし。 子供たちだけの留守番、絶対火事は出さないと約束したのだが。 次の日、会社の電話が一斉に鳴り響いた。 「早川さん、弟さんから三番」 弟? 電話に出た。 「姉ちゃん火事!」 「火事!」 周りの人がびっくり、大声で立ち上がったもんだから。 「隣?うん、うん、それで、うんわかった、切るね」 みんなが私を見てる、部長のところへ行った。マンションの隣が火事だそうです、みんなに伝えてよろしいでしょうか。そう、あちこちからもそんな声が聞こえて来た。 おう、いいぞという。 「すみません、お仕事中に、緊急事態です、○○マンションに住んでいる方に連絡です、今隣の家が火事だそうです、放水で、マンションは水浸しだそうです、それとすべての階の一号から四号は壁が焼けているので、中のものが変形したりしている可能性があるそうです、いらっしゃらない方には各部署で連絡をお願いいたします」 ざわざわとして、走り出す人もいた、電話にみんなが手を伸ばす。 パン、パン 「みんな聞いてくれ」 部長が手を叩き、みんなの視線が集まった。 急ぎの仕事があるものは一度帰って来い、それ以外の人はできるだけ仕事を終わらせて帰ってくれ。火災保険に加入しているものは連絡しろ。 部長の一声で、にわかに忙しくなった。
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