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マンションの外壁は真っ黒、ベランダ側だったので、多くの部屋が洗濯物を出していたのか、プラスチックは溶け、だらりと垂れ下がっていた、うちはセーフ、歩巳がすぐに洗濯物を入れ窓を閉めたのだ。
会社側はすぐにホテルを手配、住人は部屋にさえ入れない人が出たのだ。リフォームは必至、火災保険は、入居時に全員入っていたから何とかなりそうだ。
クリスマスイブ、イブは、最悪の日となってしまった。
猶予は一週間、年末、悠長にはしていられなかった。
その日の夜、部長には、その話はできずにいた、今まで精いっぱいやってきたけど、お金をくれないって、私に落ち度があるんだよね、そんなこと言ってらんない。とにかく、太一君の面倒は見れなくなったと話し、急なことで申し訳ありませんと頭を下げた。
「何があった」
「何でもないので、すみません、太一君、急なことでごめんね」
「せっかくのクリスマスなのにな」
ズキンと胸の奥が痛かった。
「ごめんね、また今度ね、部長、荷物は後でもってきておきますので、中途半端で申し訳ありません」
「いいけど」
「おやすみなさい」
とドアを閉めた。
泣きたいけど、こうしちゃいられない。
「もしもし、先輩?うん、忙しいんでしょ、三日・・・今から使ってくれない?」
二人に留守番を頼んだ、明日の朝戻ってくるからと言い残した、もしさみしかったら部長のところへとは・・・言えなかった。
「ごめんね、せっかくのクリスマスなのに」
「どこ行くの?」
郁の問いに
「姉ちゃんの力不足、ごめん、ここにいられなくなっちゃった、三日、三日だけ我慢して、今から叔父さんのところに行って頼んでくるから」
「いやだ!」
「いやだー」
と泣き出してしまった
「いい、この先、三人で生きていくためなの、我慢して、絶対迎えに行くから」
本当?という二人と指切りをして、私は夜の町へと出て行った。
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