エピソード2

11/23
前へ
/105ページ
次へ
マンションの外壁は真っ黒、ベランダ側だったので、多くの部屋が洗濯物を出していたのか、プラスチックは溶け、だらりと垂れ下がっていた、うちはセーフ、歩巳がすぐに洗濯物を入れ窓を閉めたのだ。 会社側はすぐにホテルを手配、住人は部屋にさえ入れない人が出たのだ。リフォームは必至、火災保険は、入居時に全員入っていたから何とかなりそうだ。 クリスマスイブ、イブは、最悪の日となってしまった。 猶予は一週間、年末、悠長にはしていられなかった。 その日の夜、部長には、その話はできずにいた、今まで精いっぱいやってきたけど、お金をくれないって、私に落ち度があるんだよね、そんなこと言ってらんない。とにかく、太一君の面倒は見れなくなったと話し、急なことで申し訳ありませんと頭を下げた。 「何があった」 「何でもないので、すみません、太一君、急なことでごめんね」 「せっかくのクリスマスなのにな」 ズキンと胸の奥が痛かった。 「ごめんね、また今度ね、部長、荷物は後でもってきておきますので、中途半端で申し訳ありません」 「いいけど」 「おやすみなさい」 とドアを閉めた。 泣きたいけど、こうしちゃいられない。 「もしもし、先輩?うん、忙しいんでしょ、三日・・・今から使ってくれない?」 二人に留守番を頼んだ、明日の朝戻ってくるからと言い残した、もしさみしかったら部長のところへとは・・・言えなかった。 「ごめんね、せっかくのクリスマスなのに」 「どこ行くの?」 郁の問いに 「姉ちゃんの力不足、ごめん、ここにいられなくなっちゃった、三日、三日だけ我慢して、今から叔父さんのところに行って頼んでくるから」 「いやだ!」 「いやだー」 と泣き出してしまった 「いい、この先、三人で生きていくためなの、我慢して、絶対迎えに行くから」 本当?という二人と指切りをして、私は夜の町へと出て行った。
/105ページ

最初のコメントを投稿しよう!

628人が本棚に入れています
本棚に追加