エピソード1

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姉ちゃんと紹介された。 「こんばんは、良美です」 「近藤太一です」 近藤? 「あのね、お迎えの時間になっても来ないから連れて来た」 連れて来たって? 「おんなじ所に住んでるって先生が言ってたよ」 じゃあこのマンション? ピンポーン、 「はーい」 ノゾキアナからのぞくと、そう、さっき走っていった近藤部長・・・だよな。 「はあ、はあ、すみません、はあ、近藤と申します、太一がこちらへ」 扉を開けると、顔をあげた。 あーと驚く部長、指ささんでも。 「太一君、お迎えよ」 ばたばたと走ってきた子供たちが並んだ。 「ヨッシー、遅いぞ」 新聞紙の上に立って靴を持った、二人が駆け寄る。 「じゃな、また明日」 ハグ? 「またあしたね」 抱き合ってキス!!! ふたりの弟が難なくこなした姿に絶句、何が起きた!驚いて、バイバイと手を振って出た太一君にあぜん。バンと扉が閉まった、すごい、太一君人なれしてる。 扉がまたあいた。すみませんでしたという。 「お気になさらないでください」 そういうのが精いっぱいだった。 バツイチ、子持ち、一身上ね、わかるわ。 「あのね、太一くんちも、お母さん死んじゃったんだって」 「へー、そうなんだ」 「でね、強く生きようって言われた」 「すごいね」 「姉ちゃん、もしもの時は彼も連れてきていい?」 「いいけど」 「晩御飯は僕の半分こするからいい?」 「郁、そんなの心配しなくていいよ、でも、ちょっとお父さんとお話してみるね、今日も、びっくりしてたでしょ、だから、歩巳、そんなときはメールして」 「うん、ごめんなさい」 「姉ちゃんごめん」 「いいよ、さあ寝るよ。電気けすからね」 さみしかったのかな、おんなじ環境に母親のいない子が来て同情しちゃったのかな。 ふたりの弟を見いていた。 静かになった、外の靴音も減り、部屋に入ったのか周りの音も聞こえなくなった。ふと残業が消えたことが頭に浮かんだ、あの人のどこがいいんだろ、顔?それしかないよな、第一印象でほとんど決まるっていうけど。身長もあるし、あーでもこれ、子供がいるなんて知ったら、どんだけの人がアタックするだろ、見ものだね。 タイムカード押された腹いせにやったろうかななんて思いながら寝た、明日も早いぞ!
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