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エピソード1
朝、蒸し暑さと寝苦しさの中、目が覚めると、現実となっていた事の重大さに気が付いた。
壁には、まだ黒いワンピースが垂れ下がり、そのわきには・・・小さな、はっ、無い!
飛び起きた。
「うわー、今何時だ?あゆみ!どこ?いくみ!」
トイレと曇った声。
ジャーと流れる音。
「できたよ」
「ウンチした」
良かったーって、朝ご飯しなきゃ。
ばたばたと、出かける準備、いつものようにはいかない、もういいや。
化粧もそこそこに、アップにする髪は、ポニーテールになった。
「はい座って、手を合わせるよ」
二人も座った。
小さな棚の上に並ぶ写真盾に手を合わせた。
「お父さんお母さん行ってきます」
「いってきます」
「ます」
部屋の中はまだ片付いていない、段ボールが積み重なり、狭いワンルームマンションは、帰ってきて寝るだけだった私のお城だったのに・・・
父と母が死んだ。
幼い兄弟を残して。
あと一週間で夏休みが終わるというタイミング。
訪れた家の中には二つの布団が並んでいた、周りにいる親戚の目が冷たく集まる。
姉ちゃんと飛びついてきた二人の弟。
訳もわからないまま、ただ二人がこの世からいなくなった現実を受け止められなくて、大声で泣きわめく二人を抱きしめるのが精いっぱいで。
矢継ぎ早に親戚の叔父、叔母からのマシンガンのようなきつい口調での話が呑み込めなくて、ただ、今目の前の現実を受け止めるだけの事が出来なくて、ただ茫然とさせてくれる暇も与えてもらえなくて。
どうして死んだの?
自殺?
なんで?
親戚たちの声なんて何位も入ってこなくて、ただ茫然と立っているしかなくて。
これからどうしよう。
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