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第3話【俺の相方に確認してみました。】
「うのちゃん、このあとさぁ……うちこない?」
いつものように劇場での定期公演を終え、控え室で帰り支度をはじめた雫に、真杜がそう声をかけてきた。
「なんで」
雫は動きをぴたりと止め、訝しむようにゆっくりと振り返る。
真杜が雫を部屋に誘う時は、新作のゲームがでた時か、漫才の稽古をする時だと決まっている。最近、真杜の好きそうな新作ゲームはでていない。漫才の稽古なら、もうたっぷりとした。誘われる理由はどこにも見当たらなかった。
「ネタ。新作できたから見てほしくて」
その言葉に雫は、じっと真杜を見て片方の眉をわずかにあげた。
「持ってきてねえの? おまえ、いつも持ってくんじゃん」
あるならだせよとばかりに雫が右手をだしてくる。
「あー忘れた。忘れたから、うちにこないかって言ってんだけど」
努めて平静と冷静を装いながらも、真杜は内心ひやひやしていた。雫は鈍そうにみえて、案外と鋭い。こちらの動揺を気取られてしまったら、誘いを断られるどころか無駄にからかわれてしまうことは目に見えている。それは、なんとしても避けたかった。
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