第24話【俺の相方を家族に紹介しました。】

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「まぁ。捨てさせようと思って連れてきたんだけど、想像以上にがっちがちで俺もびっくりしてる」  言いたい放題に言われ、雫はだんだんと物事の基準がわからなくなりはじめていた。    確かに固定概念に縛られていては、この先が思いやられる。    だが、しかし。  生きていく上で、普通の平均的で常識的な思考も、絶対に必要なものではないのか。 (俺がおかしいの? え、違うよな?) 「ふたりとも、そんなふうに言わなくたっていいじゃない。きっと雨野くんは実践型なのね。経験して身をもって感じて、ゆっくり心に落としこむタイプなのよ」 「まぁね。うのちゃん一回じゃ頭に入んないタイプだもんね」 「おまえ、それタイプとかじゃなくて、単なる悪口だろ。さらっとディスんな」  泣いたり笑ったり怒ったり、やっぱり雫は感情の波が激しく、それでいてかわいいと真杜は思う。 「来て良かったでしょ」 「うん、それはまぁ……」  自分を産み育てた母親だからこそ、真杜は反対されるとは少しも心配していなかった。むしろ喜んでくれるはずだと思っていたし、実際そうなった。  それなのに、肝心の雫がホッと安心するどころか、無駄に情緒不安定を発動してしまったことは計算外だった。 (わかってたけど、ここまで落としこみが遅いとは……)  安心させたくて連れてきたのに、少し失敗したかなとも思う。だけど、心に落としこむのが遅いなら、今日から一年かけてふたりの未来を明確に描き、そして、覚悟を決めてほしいと真杜は思った。
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