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「ラスボスはうのちゃんのご両親だけどね。俺は負け戦はしないから」
「おまえ、人んちの親をラスボス呼ばわりすんなよ」
「はいはい。じゃあ、母さん、夏蓮、またね」
ふたりに見送られ、再び真杜と雫は元来た道を歩きだす。しばらくは無言で歩き、曲がり角に差しかかったところで、どちらからともなく手を繋いでいた。真杜の大きな手にすっぽりと包まれ、じんわり伝わってくる熱に、雫は涙が出そうだった。
「ちょっとだけさ、未来を明るくしてやろうと思って親に会わせたんだけど、逆効果だった?」
珍しく弱気な発言に驚きながら、雫はゆっくりと首を横に振った。
「真っ暗な道の向こうに、絶対消えない灯りが見える感じ?」
「なにそれ。基本、真っ暗かよ」
「ちげーよ。ちょっと明るくなったよ」
「んー。昼間くらいにならない?」
「ならない。つか、おまえはどんだけ楽観的なんだよ」
真杜は、楽観視などしていない。ただ、人が通らない道を整備し、雫とふたりで歩いていこうと思っているだけだった。雫がつまづかないように怪我をしないように、地盤を固めているだけなのだが、その苦労は少しも伝わっていないようだ。
(楽観視してんのはどっちだよ)
真杜にとっては他人の反対など、まったくもって一ミリも気にならない。雫が気にするから、大丈夫なんだと教えるために親に会わせただけのこと。
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