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「うのちゃん、おはよ」
「はよ」
午後一時。
ふたりは、いつものように、いつもと変わらない様子で挨拶を交わした。
彼らは『虹色キャラメル』というコンビ名で活動するお笑い芸人。アイドルさながらのビジュアルで若い女性を中心に大人気のコンビである。
ツッコミ担当の中島真杜は、背が高くモデルのようなスタイルで、一見するとお笑い芸人にはとても見えない。
少し癖のある黒髪は、ナチュラルなショートヘアで、わずかに目尻のさがった憂いのある瞳は、クールにも優しそうにも見える。男らしい鷲鼻が印象的だが、決して男くさくはない。ほどよく中性的で、女性なら誰もが振り返ってしまうようなイケメンである。
対するボケ担当の雨野雫は、とても小柄で、まるで少女のように愛らしい。
さらさらの黒髪は、アンニュイな印象を与えるマッシュヘア。肌はぬけるように白く、アーモンド型の猫のような瞳は、気の強さの象徴のように見えるが、長い睫毛がそれをうまく中和している。ぷくりとやわらかそうなくちびるは桜色で、黙っていれば可憐な少女のようにしか見えない。
そんなふたりの出会いは、今から六年前。互いにまだ十八の時に養成所で出会い、六年の歳月を共に過ごしてきた。ふたりで過ごしてきた六年は、家族や友人と過ごす六年とはまるで密度が違う。
だから控え室に入ってきた真杜に、雫が一切視線を向けなくても仲が悪いわけではなく、これがふたりの『いつもの日常』なのだ。
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