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ミチコ
「マツムラにトーマって呼んじゃいけない、って言われたわ」
「じゃあ、なんて呼ぶんだよ? 正式名称で?」
『TOM-A』が設置してある場所は単に『部屋』と呼ばれている。トーマの好みでいろいろな映像が流れるその場所は、実際は『TOM-A』の四メートルに及ぶ巨体を維持する、さまざまな機械やコードに埋め尽くされている。今は砂浜の映像となっている場所にも、接続線が降ろしている腰にゴロゴロとあたる。
映像は『TOM-A』が造る。未知の異文化に出会った時、地球を紹介するために『TOM-A』の中にはさまざまな場所の風景が記憶されている。その中から好きなものを選んでホログラフにしてみせるのだ。目の前で砕ける波の質感、量感は見事で、潮の匂いさえしてきそうだ。
ミチコは寄せる波に手を浸した。むろん、濡れはしない。
「どうしたんだ、ミチコ」
「え───、ああ…」
ミチコは空に向かってニッコリと笑った。
「この映像もしばらくしたら見れなくなるな、と思って」
「そうだな、俺が旅立つ日まで、あと四日と十二時間三十四分」
最後の数字を言う時だけ、コンピューターのような感じになった。
(……ような? トーマはそのものじゃないの)
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