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「天田舜君。生徒会として私、山代美里亜は、あなたを校区内パトロール部隊のリーダーに任命します。これはこの学園の存続にもかかわる重大な任務です。拒否権はありませんので、素直に従って頂くことになりますが、何か異存は?」
――はい?
ないわけないだろう、とすぐに反対したかったが、彼女の出方を窺う意味でも、一度冷静にならなければと瞬は思った。
「それは僕が帰宅部だからですか、山代先輩」
そう、このパトロール部隊の候補の基準は、確か帰宅部だとカルキが言っていた。それがもし本当なら、舜以外にも大勢候補となる人物がいるはずだからだ。せっかく手に入れた放課後の自由な時間を、そうやすやすと放棄するわけにはいかない。どんな美人に指名されようが、やはり嫌なものは嫌だ。瞬は美里亜の依頼を何とかして避けようと思った。
――でも。
「あはは。そうね。私はね、天田君。本当は帰宅部に拘る必要なんて全然なくて、実際そんなことはどうでも良かったの。要はね、この事件を解決出来るかもしれない、この学園でもっともIQの高い人間たちを選ぼうとしたら、それが一番合理的だったのよ」
――何だ、こいつは。
「あなたがもっとも高いというわけではないのだけれど、それでも他のどんな優秀な人間よりも、ことそういうことに関してだけは、過去の例を見ても、可能性があると思ったの。わかるわよね、私が言っていることが。あなたは勉学には力を発揮していないけれど、本気を出せば、きっとこの状況を好転出来る。私は、山代美里亜はそう思っているのだけれど?」
――ああ。
艶やかな長い黒髪にアニメや漫画のようにくっきりとした目。艶ボクロのある魅惑的な口元から発せられるその声は、瞬の冷めきっていた心を、今確かに掴み、赤く紅葉させたのだ。
――これが山代美里亜か。
この人は、人をその気にさせるのが本当に上手い。それでも舜には断るだけの自信はあったが、今回だけはそれに乗ってみるのも有だなと思った。そうすれば、この美里亜という存在をずっと近くで見られるような気がしたのだから。
「少し考えさせて下さい」
「考えるのかよ!」と、すぐにカルキからツッコミと肘打ちがきた。そしてすぐにヘッドロックされるのは、休み時間の高校生男子のありがちな光景だろう。
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