第1章

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【サブタイトル】 第3話 放課後パトロール部隊 【本文】  放課後、校舎四階にある第二演習室に集められた舜。十平米ほどの広さの部屋には、既に女の子が二人、ホワイトボード付近の前寄りの座席に座っていた。舜は二人の席から三列ほど離れた後ろの席に座る。その瞬間、前の女の子の一人が、物珍しいのか、何度も舜の方を振り返るのだった。 「あれ、舜君もなんですね……えっと……よろしくです」  白く細長い首筋が目立つポニーテールに、猫みたいな真ん丸お目目。その上に細い眉が申し訳なさそうに乗っているから、どこか気弱な印象にさせている。一体誰だったろう。舜には彼女の名前が思い出せなかった。どこかで見覚えはあるはずなのだけれども……。ただ、一つ言えることは、彼女は小動物のように可愛らしく、薄ピンク色のブレザーが物凄く似合っているということだ。 「彼女は阿孫汐莉(あそんしおり)ちゃん。あなたとは中学一年の時、同じクラスだったはずですよ」  もう一人の女の子が、机に顔を埋めたまま、ぼそりと呟く。ああ、阿孫か。珍しい名字で、成績も優秀だったのを舜は思い出す。でも、あの頃はまだ地味で、たまにクラスの子たちに陰口を叩かれたり、イジメまがいのことをされたりしていたから、舜がその子らを怒鳴り散らした記憶がある。 「ああ、あの阿孫さんか」 「そ、そ、そうなのです。お久しぶりです、舜君。あなたに会えない間に、私、こんなにも成長したんですよー? だからもう汐莉って呼んで下さいね? ねねっ?」  「だから」と言ってあえて下の名前で呼ばせる意味が舜にはさっぱりわからないが、汐莉はかなり上機嫌な様子で、浮かれたように隣の女の子に抱きついていた。そして彼女はすぐに、舜の方に体ごと向けると、大きな目をキラキラ輝かせ、両腕でその膨らんだ胸を持ち上げるように挟み込み、プニップニッと何かをアピールしようとする。顔はもちろんのこと、中学の時とは違い、身体も十分過ぎるほど大人になっているようだ。  ――しかし、でかいな。  目のやり場に困ってしまう舜。彼女がやりたくてやっているのだろうが、そのまま見続けると、セクハラ扱いされかねない。舜は慌てて汐莉から視線を逸らし、その攻撃から逃げるように話題を移す。 「それで、そこで顔を埋めている物知りなあなたは一体誰なんだい?」
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