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大した興味はない。それでも彼女から発せられるオーラが、ひどく不気味に感じられたのだ。舜の問いかけにムクッと顔を上げ、座ったままその場で背伸びをする女の子。髪はサイドテールに茶色のシュシュをくるくる巻きつけ、綺麗にまとめられていた。そして、ゆっくりと舜を振り向いたのだった。
――あれ、可愛い。
パッツン前髪から見える目は、少し寄り目ではあるが、瞳が大きく潤むように光っている。化粧毛はないが、自然体でパーツそれぞれが可愛らしく見える。
「もしかして、新しいナンパの方法か何かでしょうか? 天田舜さん。それに、私に彼氏がいないように見えたってことですよね?」
顔を舜に向け、下から覗き込むように見てくる女の子。その瞳が、舜の心を責めるように突き刺してくる。
「いや、ナンパとかそんなんじゃないし。てか、い、いるのか、君には彼氏が。何かごめん……」
どうしてこちらが悪いのかわからないが、舜は謝るしか他になかった。これだけ顔立ちがしっかりしているのだ。見た目だけでいえば、引く手数多だろう。
「なーんて」
――ん?
「ふふっ、実は彼氏なんて一人もいないのですよ。だから、天田舜さん、今がチャンスですよ? えへへへっ」
その女の子の答えに閉口してしまう舜。何がどうチャンスなのか、細かく問い質したいくらいだ。しかし、一瞬にして彼女に手玉に取られた感じだ。何者だ、彼女は。美里亜とはまた違った凄みが彼女にはあった。
「ちょっとー、ひよりちゃん。抜け駆けは狡いよー。私だって、ずっとフリーなんだからね? ねねっ?」
――何だ。
「えへ、抜け駆けじゃないけど、彼の驚いた顔、可笑しいでしょ? 何か可愛いよね」
――一体何だ。
「はい、舜君のこういう顔も、私、嫌いじゃないですよー」
――何が起こった?
「男の人って本当可愛いよね、へへっ」
二人して可笑しそうにキャッキャ言っている。
――何だ、この恋愛ゲーム展開は。
おそらく誰か他の男子と勘違いしているのだろう。そうでなければ、女の子たちの好意を、この天田瞬がいっぺんに受けるはずがない。そう考えると、舜の乱れた心は、ようやく落ち着きを取り戻した。髪をかき上げ、疑問を口にする舜。
「それで、そろそろ君の名前を教えて欲しいな。一応、僕がこのパトロール部隊のリーダーだからさ」
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