第1章

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 そう、そんなことはわかっている。だから、この部屋がきっと()()()()()()だということも嫌でも理解している。  ――でも。  まだ間に合うかもしれない。まだ生きているかもしれない。だって、人はそう簡単には死ねないのだから。  扉を殴る舜。蹴り上げる舜。そして体当たりをする舜。何度繰り返しただろう。やがて扉は変形し、ついには部屋の中へ倒れ込んでいった。それと同時に転げ込んでしまう舜。痛みで立ち上がることが出来ない。顔にかかる長い髪を、今ほど鬱陶しく思ったことはなかった。  ひよりがスタスタと中に入って、そのまま仰向けの女の子のところまで歩いていく。脈を取っているのだろうか、その表情に恐怖の色はなく、ただ恐ろしいほどに無表情だった。  ――どっちだ。 「あなたの頑張りは無駄じゃなかったと思いますよ? 天田さん。だって、少しでも早く、彼女は()()()()を、他人に確認して貰うことが出来たのですから」  ――ああ……。 「残念ながら、彼女はもう亡くなっています」  ――駄目だったか。  興味半分で現場を覗いてしまったのだろう。やがて汐莉が上げた悲鳴が、いつまでも舜の耳に残り、心まで血のように赤く、そして黒く染めていくようだった。
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