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「あなたに解けるの? 私がこんなにも考えてわからなかったのに。身が悶え朽ちるほど苦しんでも、答えに辿りつけなかったのに」
頭の回転が速く知識も豊富な美里亜。でも、舜には彼女にはないものがある。男ならではの行動力がある。そしてもう外に出たがらない彼女の代わりに、立って動くことが出来る。
「だって、先輩にはない足が、今の僕にはあるから」
笑っているのだろうか。それとも泣いたままなのだろうか。舜は美里亜を振り返ることなく、そっと部屋の外に出て行く。部屋の外では、美里亜の母・友里が、お盆の上にショートケーキを載せたまま、物憂げな表情で舜を見上げていた。舜は軽く会釈をすると、暗い通路を忍ぶように踏み締めていった。
連続少女飛び降り事件と自殺に見せかけた一連の殺人事件。事故なのか事件なのか、はたまた怪奇現象なのか、呪いなのか。夢なのか、希望なのか、現実なのか、虚構なのか。全ては歯車が狂ったように、バラバラでぎこちなく錆びついていて、それでも前に進もうとした少女たちの淡い感情は、救われないと諦めた人間たちには、もう届かないのだと、舜は痛いほど、流れ落ちる血を悔いるほど思い知ったのだ。
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