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最近、県内の高校で自殺者が多発しているという。二学期も半ばに差しかかり、特に三年生は、数か月先に控えた受験戦争の真っただ中という時期であるのに、結果を見ずして命を落とす生徒が増えてきているというのだ。もちろん、自殺者は三年生だけというわけでもないが、自殺者がみんな女の子ばかりということで、連日ニュースでも取り上げられるようになってきた。ウチの学園だけは関係ないだろうと思っていたが、今朝の緊急全校集会で知らされたのは、ついにこの学園でも自殺者が出たとのこと。それで命を粗末にしないように、そして誰かに誘われても命を絶ったりしないようにと、お触れが出たのだった。
「しっかし、今朝の全校集会で、生徒会も躍起になってたなあ。帰宅部から数人リストアップして、校区内のパトロールを実施して、みんなの安全は守りますとかって。指名された奴の身にもなれっていうの。まあ、俺には部活があるから、とてもそんな暇はないがなあ、舜?」
そう言いながら、ニヤリと口元を緩めるカルキ。カルキはその一八〇を超える背丈を生かし、バレー部に入っている。全国大会こそ逃したものの、県大会の決勝まで行くのだから、なかなかの強豪だ。そして二年にしてレギュラーなのだから、彼にパトロールをするような時間がないのは明白だ。
「でもまあ、そんなことで自殺がなくなるようなら、こんなにも事件が広まってないさ。ここまで広がる背景には必ず組織めいた何かがある。それも見抜けない大人たちが、みんなを死に追いやっていることにまだ気づかないなんて、異常を通り越して、最早狂気だよ」
出来るだけ自分に的が当たらないように、話をはぐらかす舜。それは自分が帰宅部なのを、周りの生徒に気づかせないためでもあった。いつだって被る危険はあらかじめ回避するのが最善の策だ。
――そのはずだった。
「そんなことで悪かったわね。天田舜君」
突如、背後から良く通る女性の声が聞こえた。振り返ると瞬の目の前には、薄ピンクの制服を身にまとった三人の女の子が腕を組んで立っていた。
「うわっ、生徒会長の美里亜様に、七大天使で愛ドールのゆゆ・まりじゃねえか!」
興奮したように声をあげたのは、親友カルキだった。彼の言う通り、目の前にいたのは、あの山代美里亜と、その他生徒会の女子生徒だった。
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