ただ引きとめて欲しかった

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「もうわかれましょう」  彼女のその言葉に俺は何も言えなかった。こうして中学一年から付き合っていた俺達は、高校三年でその付き合いは終焉を迎えた。  これで全部終わった。少なくても次に彼女を作る気にはならない。後は学生らしく普通に過ごそう。  俺はそう思った。だが、そう簡単な話では無いらしい。  分れた次の日に彼女の友人に怒鳴られた。怒鳴った内容は全て俺に対する侮辱だった。 「あんたなんかにあの子は勿体無い」  要約すると全ての言葉がこの一文になる。その気持ちが何よりも理解出来るのは俺だ。だから俺は捨てられたのだろう。  だがそれだけでは無いらしい。 「お前。本当にこれでいいのか?」  友人の林も俺を心配しながら俺に尋ねる。 「良いも何も終わったことだ。俺が悪かったからこうなってしまった」  情けなく思う自分。それに林は否定する。 「違う。お前が悪かったのは正しい。だけど今のお前も間違っている」  林の真剣な眼差し。俺を本気で心配しているということがわかる。  だが俺には、何が間違っていたかさっぱりわからなかった。  わからないからこそ、思い出さないといけない。何となく俺はそう思った。  五年という歳月は俺と彼女に山ほどの思い出をこの町に残した。  土曜休みに一日使って歩きながら思い出を振り返ることにした。
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