0人が本棚に入れています
本棚に追加
「ようく終わったのね」
妻役だったアンドロイドが言った。
「ああ、なんとかやってのけたな」
友人役だったアンドロイドが答えた。
最後の人類の一人に普通の人間としての生涯を送らせるため、かつて人類に作られたアンドロイド達が協力した結果だった。
作られた家族、作られた人々、作られた町、作られた事件、作られた幸運、作られた世界。壮大な嘘に迎えられて彼は生まれ、過ごし、そして生涯を終えた。
「妻役は一緒にいる時間が長かったので大変だったろう」
「ええ、でもそれも終わりと思うと少し寂しいわ」
そんなとりとめもない会話の最中に、息子役だったアンドロイドが走ってきた。
「おおい、大変だ!」
手には紙を持っている。
「いや、実は遺書が見つかったんだが、ちょっと見てくれ」
近くに来ると、妻役と友人役に短い文章が書かれた紙を見せた。
その内容はこうだった。
全部知っていたよ
知らない振りをしていたのは
人類最後の嘘だ
Thanks you
and
Good by !
最初のコメントを投稿しよう!