卒業式

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卒業式

さて、卒業式の日が来た。厳かな式が終わると教室に入った。担任からは卒業証書が手渡された。最後のホームルームとなり、私は高山君の横顔をチラ見した。これが最後のアップ顔になるとはこの時思いもしなかった。 ホームルームが終わり、みんなは外へ出ることにした。先に並んだ在校生に見送られ、各自写真を撮ったらそれぞれ帰宅した。在校生から貰った花を生けると制服を脱いで普段着に着替えた。もう二度と着る事がない制服をハンガーに掛けておいた。その後、その制服は母が中学校のバザーに出品することになる。 それからが大変だった。これまで使っていた教科書やノートなどをゴミに出し、高校で使う学用品を買い揃えた。三週間はあっという間に過ぎて高校の入学式に臨んだ。 当然ながら、高山君はいない。それどころか見たことない顔ばかりで溢れている。受験日以来の子が同級生となる。今日から、この子たちと毎日顔を合わせなければならない。 式典が終わり、教室へ入った私は席に座った。このクラスには、同じ中学出身の子はいない。この学校へは通学するのに都合の良い他地域からの生徒が多い。試合でも対戦したことがない中学出身の人で固められたクラスに馴染むには時間かかるだろう。 野球部のマネージャーは席が塞がっているので、英語クラブに入ることにした。野球からも切り離された私は、せいぜいテレビでしか高山君の顔を見ることがなくなった。あんなに楽しみにしていた高山君との甘い夢はこうして消えていった。 私は、英語クラブへ招かれるアメリカ人ALTのデービッドに恋するようになった。しかし、彼は一年契約で任期が終わると帰国するから、日本人高校生と結ばれることはない。それどころか、本国に恋人がいるので、帰国後には彼女と新生活を始める。 高山君にもデービッドにも振られた私は、次の新しい恋を求めて翻弄するのである。
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