期末試験

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期末試験

こうして一週間が過ぎた。私の学校のチームは三位になった。優勝した学校は、いつものシード校だった。それは最初からわかっていた。中途半端な勝ち方も困ったもので、優勝を逃した事をガタガタ言われる。 中には聞こえよがしに「私だったら、高山君にトロフィーを持たせられたのに」とイヤミを言う女子がいる。私は「文句あるなら、代わってよ!」と喉まで出かかった言葉を呑み込む。 試合シーズンが終わり、期末試験の時期が来ると部活も休みである。私は、部活がなくても教室で高山君を見られる。野球が無ければ劣等生な高山君は、お勉強ではヒーローではない。辛うじて体育で点を取る男子なのはわかってる。それでも、放課後になると高山君目当てで近寄ってくる女子が後を絶たない。私は、本来の部活にも影響するため、その中には入らず遠巻きで見ていた。 女としては、高山君に好意を持っている。私の立場と性格が災いしているのか、本人に向かって好きと言えないでいる。公私混同と言われるので、あくまで仕事ツラで高山君たちと接してる。 そして期末試験の日がやってきた。私は配られた回答用紙を埋めるのが精一杯だ。時間が来て、後ろから回答用紙が回収される。それを幾度も繰り返して一日が終わった。 試験が終わり、採点された回答用紙が配られた。私は70点辺りを取っている。ベスト3に入る進学校へ行くには少し足りない。そうかといって、底辺校へ行くにはもったいない。恐らく高山君はこういう点数を取っていないだろう。ここで、釣り合いが取れないとの判断材料が出る。 頭の良い男子は運動音痴で見栄えもダサい。スポーツや音楽ができる者はテストの点数が低い。天は二物を与えずとはこの事を言う。 私には同じような点数を取る男子が似合ってるのだろう。しかし、そういう者はパッとしない。クラスに居ても存在感がないので、その男子にときめかない。あっちも、私には興味がないのだろう。このすれ違いを起こす教室は間もなく夏休みを迎える。 そして終業式の日が来た。1ヶ月は野球部員以外このクラスメイトと会うことはない。スポーツしか能がないエースと普通の子との夏はこれからである。
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