第3章

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「クリーニングが終わったあと、ビニールで包装される前についたってことになるね」  わたしが自分の推理を話すと、奥村さんは思案げにうなずいて、 「とりあえず、工場に電話してみます」  そう言って、備え付けられてある店の電話を手に取った。その間、わたしは、彼女が電話をしているのを、学校にお休みの電話をしている母親を見る子どものように、ただ見ているのもバカバカしいので、スマホで血の部分の証拠写真を撮ったあと、ティッシュに水をつけて、その血らしきあとを軽くこするようにしてみた。すると、あら不思議、魔法のように、血の跡が消えてしまった。そのあとに、ドライヤーで軽く乾かすと、血の跡がついていたなんて、まったく分からないくらいになった。 「クリーニングしたあとの行程で、工場の人が手を怪我して、その血がついたんじゃないかってことでした。他にも同じようなことが起こっているかもしれないので、マネージャーに言って、全店舗に連絡するようにするって」  電話を終えた奥村さんが報告してくれた。わたしが、 「見て見て、血の跡、分からないくらいに落ちたよ」  わたしの成果を報告すると、奥村さんは驚いたような顔をして、 「今から、お客さんに連絡して、事情をお話しして、工場に再出ししようかと思っていたんだけど」     
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