第3章

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   翌日も、わたしは、同じ店舗で、奥村さんと一緒だった。はあ、楽すぎる。ずっと奥村さんと二人だったら、まあ、客からのクレームによるストレスはあるにせよ、それ以外の点では、めちゃめちゃストレスフリーなことだろう。 「奥村さん、この店って、一人足りないんだよね?」  わたしが訊くと、奥村さんは、うん、とうなずいた。 「なかなか人が入らないみたいで」 「わたし、こっちに来させてもらおうかな。マネージャーに言ってさ」  そう言うと、奥村さんは難しい顔をした。 「わたし、来ちゃダメ?」  ひょっとして嫌われているのかなと思って訊いてみると、奥村さんは、慌てて手を振った。 「違うよ。そうじゃなくて、原川さんは、わたしと同じで正社員だから、難しいんじゃないかなと思っただけ」 「正社員は各店舗に分散して置いておきたいってこと?」 「会社としては、そうなんじゃないかな?」 「そういう風に正社員とパートを分けるって意味ないよね。だって、能力がある人が必ずしも正社員になっているってわけでもないじゃん」 「それは確かに……」 「ま、わたしたちは、能力がある正社員だけどね」  わたしが胸を張ると、奥村さんは苦笑した。     
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