第2章

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と息巻いている。本社でも、警察でも、消費者センターでもどこでもかければいいと思ったわたしは、とはいえ、これから起こるマネージャーとのやり取りを考えてうんざりしていたけれど、今回は運がいいことに、 「母が無理を言って申し訳ありませんでした。一度お願いした限りは、キャンセルなんてお話にならないのは分かっていますので」  とその娘さんらしき40代の女性が引き取りに来てくれた。そうして、重ねて、別のクリーニング品を出していってくれた。  暑さが引いてきてからぶり返すように暑くなったある晩のこと、30代の後半くらいの女性がやってきて、クリーニング品を出していったあと、 「わたし、このお店のほかにも、クリーニングを出していたんだけど、この店だけにすることに決めたわ。このお店のあなたや他の人の対応がとても気持ちよかったから」  と言ってくれた。  わたしは、思わず目の奥が熱くなるのを感じた。自分がしてきたことが間違っていなかったということが、もちろん、この人一人のことで、完全に肯定できるわけではないけれど、それでも、その可能性は手にできたということだった。今のわたしにはそれだけで十分だった。それだけで、明日の仕事に向かうことができる。 「ありがとうございました」  感動のために一拍遅れてお礼を言ったときには、その客はすでにスーパーの出口へと向かっていた。
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