第3章

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 とにかく、マネージャーに話してもらちがあかない。らちがあかないでは話は済まないわけで、またクレームになって、その怒鳴り声を聞くのは受付であって、それがわたしになる可能性は大いにあるわけだから、なんとからちを開けないといけない。マネージャーに話しても無駄なら、その上の役職に話すまでだ。折良く、月一の会議の日が近く、さらにタイムリーなことには、その会議にうちの店舗からは、わたしが出席する番だった。  その日わたしは、マネージャーの上の課長と、その上の部長がいる前で、工場からただ着物を突き返された件でクレームがあったことを議題にした。  すると、部長の顔が、ムッと歪んで、 「初めから順序立てて話してくれないか」  とぶっきらぼうな声が投げられた。  その声音に、わたしも内心でムッとしながらも、それほど順序なんてものを気にするような複雑な話ではなかったけれど、これ以上無いほど、丁寧に話をしてやった。 「ありがとう」  部長は、わたしに礼を言うと、強い目をマネージャーに向けた。どうやらわたしに怒っていたわけではないらしい。 「申し訳ありません!」  マネージャーは、いきなり謝り出した。それはもう見事な頭の下げ方で、全国謝罪選手権でもあったら、ベスト4に入れそうなものだった。しかし、 「本当に申し訳ない!」  頭を上げたあと、もう一度同じ事を繰り返したので、ベスト8に格下げした。それを見たわたしはつい、部長が話すターンだということを忘れて、 「謝るんじゃなくて、対応策を考えてくださいよ」  と言ってしまった。それでも部長は気を悪くした風でもなく、返って、 「原川さんの言う通りだ。すぐに対策を考えてくれ」     
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