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「旦那! 空から男の子が!!」
「何だって!?」
キョウは畑を耕す手を止めて、咄嗟に空を見上げた。
五月晴れの空の下、久しぶりに畑仕事でもと思っていた矢先の出来事だ。
雲一つなく真っ青な空の上を、一筋の白い線が走っていた。その端には少年が居た。しかも箒に跨ったままという謎の恰好だ。その少年が、今まさに恐ろしい勢いで空から――この畑に向かって落下している。
「旦那! 危ないぜ!」
「お、おう」
二人は急いで、とりあえずキョウの家の中に避難した。
「なんなんだありゃ!? 物の怪の類か!?」
興奮した様子でシマが言った。シマはこの町の小さな奉行所の岡っ引きだ。あまりにも事件がおきないど田舎なので、こうして毎日町中を手持無沙汰にうろうろ回っている。暇だなあ、とおもむろに空を見上げたら少年を見つけたというわけだ。
「うわあああ!!止まれえええ!!!」
外から大声が聞こえたので、キョウは少しだけ引き戸の隙間から外を見た。シマもそれに続く。
「喋ったな! 物の怪って喋るのか!?」
「知らねえよそんなこと」
ところが、それっきり声は止み、畑は穏やかなまま変化がない。あの速さで落ちてきたなら、もうとっくに畑に落ちてきているはずだ。キョウは心穏やかではなかった。畑には夏に向けてトマトの苗が植えてあるのだ。そんな所に落ちて来られたらたまったものじゃない。
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