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「おい、もうそろそろ落ちてきてもいいんじゃないか」
「そうだな……旦那、確認してくれ」
「馬鹿。そういうのは岡っ引きの仕事だろ」
「勘弁して下せえよ。物の怪は専門外でさあ」
仕方なく、キョウは引き戸を全て開けて外に出た。畑は無事だった。
しかし、そこには少年が箒に跨ったまま――トマトの苗のぎりぎりの所で浮いていた。まるで時が止まっているようだ。
少年の髪は真っ白で、瞳は今日の空よりも青い。こんな綺麗な色をキョウは見た事が無かった。
服は洋服で上下ともに真っ黒だ。その姿は軍の関係者を思わせた。
「旦那、これはいったい……」
おそるおそる後から出て来たシマが驚いた様子で言った。シマもまた、奇抜な少年の姿を見てますます目を丸くした。
「あれ……生きてる」
少年はそう呟くと、ぴょんと蛙のように跳ねて箒から降りた。そしてキョウとシマを交互に見て、微笑んだ。
「良かった……助かったんだ……」
そう言うと少年は、膝からぐらりと崩れ落ちた。咄嗟にキョウがそれを受け止めた。死んだ、そうキョウは思ったが、聞こえてきたのは穏やかな寝息だった。
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