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「どうするんです旦那。こんな物の怪放っておきましょうよ」
「そういう訳にもいかんだろ。生きているんだから」
キョウとシマは、とりあえず家の中に少年を運び入れた。少年はすやすやと眠ったままだ。
キョウは万年床と成り果てているそこに少年を横たわらせた。お世辞にも綺麗だとは言えないが、布団は一組しかないので仕方がない。
「おっかねえ……あんな空から落ちてきて死なねえなんて。いったい何の物の怪なんですかね」
「まだ物の怪と決めつけるのは早いだろ。新しい空を飛ぶ実験か何かかもしれん」
「そりゃあそうかもしれやせんが……箒なんかで空を飛ぶ実験なんてしますかね?」
分らないのでキョウは黙っておいた。確かに箒で空を飛ぼうとするなんて時代錯誤だ。
数十年前、この国は異国からの影響を大きく受けた。それによって、科学、医療――人々の暮らしは大きく変化を遂げた。
キョウたちが生まれる前はあったという身分制度とやらもなくなり、人々は好きな仕事就くことが出来るようになった。人々は好きな服を着て、好きなように生きている。それが今の世の中だ。
大まかな移動手段は電車、バス、車――そして飛行機がある。今や空を飛んで移動をすることは珍しいことでもなんでもない。しかし、何故、箒なのだろう……。それではまるで――。
「うっ……」
「旦那! 気が付いたようですぜ!」
少年が呻いた。
キョウとシマは布団に駆け寄り、その顔を覗いた。
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