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それに最初に気づいたのは入浴中の時だ。
洗髪の為に手桶に溜めたお湯を頭一杯にかぶせた。熱湯からたつしぶきと湯気に目を凝らしながら、鏡の前の棚に置かれたノンシリコンシャンプーに手を伸ばそうとした時である。
手が止まった。
自分が今、この緑のボトルたちのどちらに手を伸ばそうとしていたのか忘れたのだ。
私が取りたかったのは、シャンプーだったのかコンディショナーだったのか。それともどちらも終えた後だっただろうか。ならば手を伸ばそう、ボトルを見ようなどとは思わなかった筈だからと、思考を巡らせ、それでも私は、私が今何を洗い流したのかが分からなかった。
しばらく悩んでからシャンプーのボトルを手に乗った。
二度洗いも悪くないと美容師が言っていた気がする。そう言い聞かせるしかなかった。
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