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***沙織***
「ちょっと、売店に行ってくる」
佐野さんがイスから立ちあがって、レントゲン操作室を出ていった。
「沙織……」
二人っきりになって、慎ちゃんが背後から私を抱きしめた。
「ダメよ。院内ではイチャイチャしたくないって、自分で言ってたじゃない」
「ここには誰も入って来ないだろう」
抱きしめる慎ちゃんの腕に力がこもる。
「佐野さんが戻ってくるわよ」
「気をきかせて出て行ったんだろう。しばらくは戻って来ないよ」
「ダメだったら」
慎ちゃんの腕からのがれ、振りむいて軽くおでこにキスしてあげた。
「意外とお堅いんだな。もっと自由奔放なのかと思ってた」
「フフッ、でもちょっとスリルがあるわね。病院だと」
「だろう。ねぇ、ここに座って。変なことはしないからさ」
座っている慎ちゃんが自分のひざを指さした。
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