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甘く清らかな薔薇の香りが広がる。
これって、、一体何本あるの?
軽く50本以上もありそうな、大きな花束。真紅よりも少し明るい綺麗な赤い薔薇。
慎ちゃんったら、またこんな散財なんかして……。
「すごく綺麗! どうしたの? 私、誕生日じゃないわよ」
「これね、希望って言う品種の薔薇なんだって。沙織さんがマンネリだって言うから。外食より花のほうがいいかなって思ってさ」
「そんなこと気にしてたの。じゃあ、この薔薇ってベッドに撒くつもりで買って来たってわけ?」
「沙織さんがして欲しいならそうするけど」
悪戯っぽく慎ちゃんが笑った。
「こんな素敵なの、もったいないわ。でもコレどうするの? 花瓶なんてないでしょう?」
「あ、そうか、忘れてた。困ったな」
「明日、花瓶を買ってくるわ。とりあえずバケツに入れときましょう。萎れたら大変だもの」
洗面所に置いてあったバケツに水をはり、花束を入れて寝室へ飾った。
「お花なんて貰ったの久しぶりよ。ありがとう。晩ご飯食べる? こんにゃく麺の冷やし中華だけど」
「やった! 冷やし中華食べたいって思ってたんだ。だけど先にシャワー浴びる。汗かいちゃったから」
バスルームから出て来た慎ちゃんに、冷蔵庫から冷やし中華を出してあげた。
「ごめんね、私のダイエット食に付き合わせて。普通のより不味いでしょ。ビールも飲む?」
「ビールは後でいい。美味しいよ、これ。僕だって太りたくないし、沙織さんのご飯はいつも健康的で好きだな」
「ありがとう。じゃあ、よかった、外食じゃなくて。素敵な花束がもらえたもの。遅いから、今日は誰かとお食事して来るのかと思ったわ」
「い、いや、ちょっと、他にも用事があったんだ」
なんとなく言葉を濁したので、それ以上は追求しなかったけれど、なにか怪しい……。
隠し事なんて、しない人だと思っていたけれど。
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