年下の彼

51/57
前へ
/459ページ
次へ
面白そうなテレビもないので、ベッドに寝転んで読みかけの文庫本を読んでいた。 直木賞作品だというけれど、面白く感じられなくて、ちっとも進まない。 この作家とは相性が悪いのだろうと思いながらも、我慢して読みつづけた。 そのうち眠くなって、いつの間にかうたた寝をしていた。 ふと目がさめると、慎ちゃんが隣でジッと見つめていた。 「嫌ね、寝顔なんか見てないでよ」 不機嫌に起きあがり、手ぐしで髪を整えた。 「どうして? すごく可愛いのに」 「可愛くなんてないわよ。枕によだれを垂らしたりしてることもあるんだから」 「僕、沙織さんのそういうところが見たいな。いつも隙がなくてステキすぎるから、ちょっと疲れちゃう」 「えっ、そ、そうなの? 慎ちゃん、疲れてたの?」 結構、ショックな発言。 私はまわりの人たちをいつも疲れさせるトラブルメーカーだから。 「沙織さん、もう寝ちゃう? 僕ちょっと話したいことがあって……」 な、なによ? かしこまっちゃって。 も、もしかして、もう別れ話?! いくらなんでも早すぎよ。 私と長続きできる人は、この世に一人もいないの?
/459ページ

最初のコメントを投稿しよう!

215人が本棚に入れています
本棚に追加