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「どうですか。今回の作品の感想は。」
「うん。いいと思う。僕は好きだよ。」
「本当にそう思っていますか?」
「ごめん。嘘ついた。こういう話ってありきたりすぎて、正直言うと見飽きているかな。」
「はぁー。やっぱりそうですか。で、何で最初嘘をついたのですか?」
「そこは、高橋君の気を悪くしないために決まっているじゃないか。」
「そういうお世辞はやめてくださいって言いましたよね。僕と山畑さんの間だけでこの話が完結するなら問題ないのですが、読者が満足しないと意味がないんですよ。僕に気を遣うそういう嘘は、かえって僕の為にならないです。」
「ごめん。つい癖で最初は褒めてしまうんだよな。その後にちゃんと言いたいことを言うのが私のスタイルなのだよ。」
「時間の無駄なので、最初から正直に話してください。」
担当の山畑さんは、相手の気を悪くさせないために、ネガティブな意見はやんわりとしか言わない。でも、正直に分かりやすく意見を言ってもらった方が時間も少なくてすむし、変な誤解もしなくてすむ。もうそれなりに長い付き合いで、このことを山畑さんに何度か言っているのに、中々山畑さんの癖はなおらない。
「そんなことより、この前娘の運動会があって、ほら、その時の写真。」
そんなことよりって…。こっちは睡眠時間削って作品を作っているというのに。
「可愛いですね。」
よく見ると全然可愛くなかった。
「あ、嘘つきました。よく見ると全然可愛くないですね。」
まさか口に出るとは思わなかった。ここ最近寝不足が続いているせいか、頭が正常に働いていない。この失言に対しても、まぁ言ってしまったものは仕方ないかと思えてしまって、全然焦りはない。
「高橋君、それはいくらなんでも失礼だよ。まぁいいけどさ。」
「いや、やっぱり嘘だ。娘をバカにする奴は許さん。」
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