菜純と菜緒

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菜純と菜緒

 保澄さんが病室に駆け込んできたのは、約束していた時間を一時間以上過ぎた頃だった。 「ごめんなさぁい、時間かかっちゃった!」  保澄さんは入ってくるなり、真澄さんの手を取って抱擁、それから頬を重ねる。真澄さんは音と触感だけで外界と接しているのだから、こういう形になるのだろう。初対面の私に両手を広げてくれたのも、親愛表現というよりは、いまの彼女にとっての普通だったということだ。 「ダメだよ、お姉ちゃん、せっかくKIKKOさんが来てくれてるんだから」 「仕方ないですよ、先方の都合もあるし、他にも・・・・・・」  名前が出たので私も会話に加わったのだが、保澄さんがアイコンタクトを送ってきた。危なっかしい物言いだったようだ。今日は訳ありの仕事とも聞いていたので詳しく説明するのは良くない。
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