まぼろしの天使

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まぼろしの天使

 コンコン・・・・・・  ドアを小さく叩いてみる。返事はない。  教えられた部屋番号で合っているし、表札も「向山(さきやま)真澄(ますみ)」。間違ってはない。しかし保澄(ほずみ)さんがいないのなら、勝手に入るわけにはいかない。  市立病院に到着した時、ロビーに保澄さんは見当たらなかった。えーと、明日の予定は午後に一件用事が入ってるかな、そうだね、それ終わらせてから一緒に行こっか、病院のロビーで合流して・・・・・・昨日、保澄さんはそう言ってたけど、肝心の彼女がまだなのならどうしていいのやら。携帯に連絡してもマナーモード。 「長引いているんだろうなぁ」  このままロビーで待つべきか、それとも病室へ行くべきか。普通に考えると、取り次ぎなしで他人が押しかけていいはずがない、でも部屋番号も表札の名義も教えてもらっている、もしもの時は一人で病室を訪ねなさいということなのかも知れない、それに、保澄さんはすでに病室に入っていてマナーモードの解除を忘れてるだけってことも・・・・・・といったことを考えながら、私はいま、あの(かけい)菜純(なずみ)の病室前に立っている。
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