神在月、出雲大社にて

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「かっ会社では笑わない方が良いと思います。……だって、課長がいつも笑っていたらみんな仕事が手抜きになります」 取り繕えない言葉に、言い訳が苦しい。 「……そうか。じゃあ、これは想い人の前だけにしようか」 そう言ってまた静かに笑む彼の優しい眼差しに、何故か私は小さく傷付いていた。 ーー想い人の前だけーー 彼には、既に誰か想いを寄せる人が居るのか。 職場の上司が見せた甘い笑顔に一瞬でもときめいてしまった自分を恥じた。 きっと違う土地でいつもの日常と異なる中普段と異なる表情を見せた彼に、少しだけ私の心に風が吹いた。 ただそれだけの事。 まだ恋にもなっていないこの思いは早急に鎮火させよう。 心が勝手に勘違いしただけなのだから。
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