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神議り
「さて、今年はどの様に縁を結びましょうか」
「今年も随分と多くの者達が想いを寄せておりますね」
「あの者の願いは如何です?強く願って光り輝いている」
「どれどれ?」
「おお、あれか」
「あれですね」
「ほう、隣で願うおなごと一生を添い遂げられます様に、か」
「かれこれ五年越しの想いの様ですね」
「さて、その隣とは……」
「あれはまだ相手を探しておる最中」
「まだあの者の想いにはには気付いていない様子」
「願いの中に、互いが尊敬し合うとある」
「それならばあの者は丁度良い」
「あの者を尊敬している」
「そうですね。あの者なら手も繋いでくれそうだ」
「二人共神の存在も心から信じておる様子」
「良いのではございませんか?」
「良い縁となりましょう」
「では、この縁を結びましょう」
一人の年老いた神が小さく手を上げて空にすいっと線を引く。
やがて、彼女が言葉を発した。
「やっぱりダメです! 課長は笑わないで下さいっ」
彼女はまだ、この縁が結ばれた事を知らない。
それを知るのはもう少し先の話。
了
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