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「くそったれ……」
みぞおちに食らった工藤は、体を押さえ、膝をつく。すると、赤松は直ぐ様、工藤の目の前に立つ。
「立て、ここは人目に付く。場所を変えようじゃないか」
赤松の言葉通り、周りにはいつの間にか人だかりが出来ていた。
赤松はあまり、騒ぎが大きくなると困るため、工藤は周りの人を巻き込まないため、場所を変えることにした。
「……ああ」
◇◇◇◇◇◇
ウエスタンシティより、南に2㎞の砂漠地帯。
砂と岩だらけで、草木1本見当たらない。時おり吹く風が、妙に痛々しいほど、寂しげに感じた。
「ここらは、戦争の影響で何もない。見ての通りな。かつてはここにも豊かな町があった」
赤松は、延々と広がる砂岩を見て、呟く。
その赤松をじっと観察していた工藤は、先ほどの名前にピンと来る。
「そうか、お前、反政府軍だな。赤松という名前、何処かで聞いたことがあると思っていたが。お前、元紅蓮隊の隊長にして、反政府軍の中心部隊である黒影特攻隊の赤松守時か」
「ご名答。知ってもらえているとは光栄だ。政府軍の工藤誠士郎殿」
名前を言い当てられた工藤は、そこまで驚いた顔を見せない。
「やっぱり、俺の正体を知ってやがったのか」
「もちろん。なあ、レオ?」
「その通りだよ」
何処からか男の声がする。
若い。30代、いや、20代。どこかで聞き覚えのあるような声であった。工藤は、声のする所を探そうと、首を左右に振る。
「何処にいやがる!?」
「ここだよ」
すぐ後ろ、耳元に囁くように男の声がした。
「なっ!」
思わず、工藤は、後ろへ飛び退いた。そして、男の顔を見るや、あることに気づく。
「お前は!!」
「あれ?僕を知ってるの?」
「ざけんな、佐久間蓮威!」
工藤に名前を呼ばれ、銀髪の青年は、頬を膨らませる。
「あれま、バレてたか。せっかくレオなんて偽名まで使ったってのに。……久しぶりだね、誠士郎」
佐久間と呼ばれた銀髪の青年は、少年のような純粋な優しい目から、眼光の鋭い、獲物を狩るようなハンターの目つきに変わった。
その様子を見て、工藤は確実に男を佐久間だと認識する。
「10年前の四天戦争以来か」
「うん、そうだね」
間が入り、二人は過去のことを思い出す。
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