悪魔の証明

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悪魔の証明

 煙草の匂いのする男だった。罵詈雑言とあらゆる侮蔑の言葉にまみれた喧騒の隅で、彼は静かに佇んでいた。ともすれば消えてしまいそうな存在感をもって、彼は確かに存在していた。  男の名を呼ぶと、呼ばれた名前をむず痒そうに受け止めて、彼はこちらに歩み寄った。手元の煙草はフィルターまで吸い尽くされ、男の手の中で惨めに燃え尽きた。 悪魔の証明 「ある事実・現象が『全くない(なかった)』」というような、それを証明することが非常に困難な命題を証明すること。
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