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中学3年の終わり、進路も決まって油断も少々歓迎なころ。
最も寒い季節を越えたので畳みの上に厚みのあるマットレス、羽布団と毛布のお布団セットの中がぬくぬくで心地いい。
夢は見ているんだろうけど、普段は覚えていない。
けれど、今夜は寝ている自覚がある中、誰かが私を呼ぶ。
「早織ちゃん……、早織ちゃん」
音像がだんだんとハッキリしてきた。
「早織ちゃん!」
これは……、
「花穂?」
「早織ちゃん起きてよ!」
ハッ、
「今のは夢?」
目が覚めたような感覚の中で誰に問うわけでもなく言葉が漏れた。
「早織ちゃん、やっと起きた」
返ってくるはずのない返事、家は古いけど出ない、だから……、
「あー夢、まだ夢、そう夢……」
状況を言い聞かせるように呟き目を閉じようとしたけれど、
「待って、また寝ないで」
いや、私は寝たいんです。
「随分、ちゃんと会話できる夢だなぁ」
「だから、今は夢じゃないの!」
「夢じゃないって、花穂は先月、病気で他界したでしょう、今会えたらそれはそれで怖い……」
「何よ、人を怨霊みたいな言い方して」
「怨霊じゃなくても幽霊でしょう?」
「それはそうだけど」
ツッコミをしていたら徐々に感覚がハッキリしてくる……、
「あれ? 随分目が覚えてきたような気がする、本当に花穂と話してるみたい」
「だから夢じゃないって言ってるじゃない!」
声と私を揺する感触、暗い室内に人影……、
「えー、じゃあ本当にゆーれー」
思わず飛び起きる、とはこういうことか。
「そんなに大声出したら家の人が起きちゃうよ」
小柄でワタワタする姿、制服姿なのはまぁ置いといて、花穂で間違いはなさそう……、
「私、花穂に祟られるような事をした覚えないんだけど?」
「祟りに来たんじゃなくて、頼りに来たの、早織ちゃんなら絶対私に気付いてくれると思ったから」
うーん、確かに金縛りなんかはないけど、
「頼りに? 全く話が見えないんだけど」
「それは、これから説明するけど、ちゃんと起きた?」
夢だと言い張りたいけど、もう無理か……、
「まだ3時……、眠いのは眠いからちょっと目覚ましに飲み物取ってくる」
追い出そうにも花穂だし、仕方ないか……。
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